川の研究資料イメージ

著者・研究者たち

Proffesors

著者

本書『エッセンス・オブ・リバーズ』は、私の半生を費やして行った旅の記録です。それを通じ、私は魚と人間の両方にとって、なぜ川が欠かせないのかを理解するようになりました。スタートは日本。そこで私は中野繁という研究者に出会い、北海道のイワナ属を調べるようになったのです。その後で私は研究の舞台をコロラド州に移し、川と魚に対する脅威について仲間たちと調査を行いました。

森や音楽、そして健康と同じように、川は私たちに与えられたすばらしい贈り物です。もしそれを守ろうと思うなら、なぜ私たちがそれを愛するのか、理解することから始めなければならないでしょう。

著者: カート D. ファウシュWritten by Kurt D. Fausch
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著者プロフィール

カート D. ファウシュ(Kurt D. Fausch)
コロラド州立大学の魚類・野生動物・保全生物学科に勤続30年以上、現在は名誉教授。2015年に、自然環境をテーマとしたノンフィクション文学を対象とする Sigurd F. Olson Nature Writing Award を受賞。近著に、本書の続編である A Reverence for Rivers がある。米国コロラド州在住。

訳者

「玉ねぎのように」多層的な本。斬新な仮説がいかに証明されていくかを記録した、ユニークなサイエンス・ドキュメンタリーであると同時に、生涯の友との出会いと別れのエピソード、河川生態学の基本、水にまつわる哲学的な考察も本書の大きな柱です。もともといた場所で尊重し愛されている在来の魚が、すこし離れた別の場所ではアグレッシブで侵略的な外来種になりうるという事例も示されています。さまざまなコンテンツを貫くキーワードは「愛」と「時間」。自然や釣りをする人、生態学に興味がある人、関連の学生諸君に、ぜひ読んで欲しいと思います。

訳者: 東 知憲Translated by Tomonori Higashi
訳者の東知憲氏の顔写真

訳者プロフィール

東 知憲(ひがし とものり)
東京外国語大学卒業(米文学専攻)。アウトドア領域で活動する翻訳者・執筆者。訳書はギーラック『トラウトバム』(つり人社)、フィットロック『L. L. Bean フライフィッシング・ハンドブック』(翔泳社)、シュイナード他『シンプル・フライフィッシング』(地球丸)など多数。

研究者・関係者

占部城太郎(東北大学 名誉教授)の顔写真
占部 城太郎(東北大学 名誉教授)

境界を超える―それは自らの限界を乗り越えること。筆者は川の研究を通じてこの課題に挑み、日本の生態学者・中野繁さんとの出会いによって、その意義と価値を見事に体現した。本書には、自然を愛し、川と魚に寄り添いながら生きた中野さんの深い洞察と、ファウシュさんの飾らない人柄がにじみ出ている。失われつつある自然との向き合い方、生態系の本質を知りたいすべての人に、ぜひ手に取ってほしい一冊である。

谷口義則(名城大学 教授)の顔写真
谷口 義則(名城大学 教授)

本書の主人公はファウシュさんと中野さんだが、両者を師とする数多くの学生もバイプレイヤーとして登場する。ファウシュさんが教えるアメリカの大学に留学中で、落第寸前の劣等生も登場するが、それが私。彼が「ナカノ」との研究について熱く語ってくれたのを思い出す。やがて中野さんの門下生となり、両者を長く見てきた私は、本書こそファウシュさんによる渾身のレクイエムであると断言する。

菅野陽一郎(コロラド州立大学 准教授)の顔写真
菅野 陽一郎(コロラド州立大学 准教授)

私がファウシュさんの研究を知るようになったのは大学院生の頃。論文は読み応えがあり、当時の川魚・河川生態学をリードするものだった。本書では彼の研究の舞台裏や研究を成功に導いた人たちとの出会いにも触れることができ、自然を相手とした野外での生態学研究の奥深さ・難しさが分かりやすく表現されている。そして何より、川の自然保全のためにヒトは川を愛するようになれるのか、という究極的な問いについて考えさせる一冊である。米国コロラド州立大学の同僚として、この度の翻訳出版に携わることができ、嬉しく思う。

森田健太郎(東京大学大気海洋研究所 教授)の顔写真
森田 健太郎(東京大学大気海洋研究所 教授)

川に足を運ぶ目的が魚を釣るというより、自然を感じることにあるのなら、本書はきっとあなたに満足をもたらすだろう。著者のカート・ファウシュさんは、日米の河川をフィールドに、サケ科魚類の研究に長年取り組んできた。本書では、研究者がどのように川と生き物に向き合ってきたのかが細やかに描かれ、科学と感性が交差する豊かな世界が立ち上がる。川と生き物を見つめる先人の姿に触れ、研究者を志す若者が現れることを願う一冊である。